scenery





「あ、お帰りなさい」

買出しにいった荷物を降ろしていると
丁度帰ってきたバッシュに出会う

「じゃ、私また出ますね」

「帰ってきたばかりじゃないのか」

「荷物取りに行かなきゃならなくて」

「ならば手伝おう」

突然の申し出に足が止まる

「だ、ダメです。だって私の仕事なのに」

「二人の方が早く終わる」

正論だが最近やっと手に入れた私にも出来る仕事なのだ

「・・・・・・・でも」

「それほど嫌なら止めた方がいいな」

「そ、そんな!、、その・・・疲れているんじゃないかと思って」

ゴモゴモしているとバッシュは私の肩に手を乗せ
それなら問題ないと言って歩き出した










賑わう商店街を並んで歩く。
話をしながら辺りを見回し
何かを見つけてはバッシュに声をかける

「楽しそうだな

「ええ、とても。あ!あれは?」

そうして指差したのは黄色く大きな鳥

「チョコボの事か」

「へぇー」

「見たことが無いのか?」

「こんなに近くで見たのは初めて」

大きな嘴にそっと手を伸ばすとゆっくり擦り寄ってきた

「こんなに人懐っこい動物なんですね」

羽はふわりとしていて触ると思っていたよりも柔らかく
手の平よりもずっと大きかった

「チョコボに乗って走ったらとても気持ちよさそう」

そう言った彼女は無邪気な笑顔を俺に向けたから

「乗りたいのか?」

思わずそう口にしてしまった―








言われた事を受け入れ、いとも容易く吸収する
その適応能力には驚ろくばかりだ

「んー、気持ちいい」

「あまり遠くには行かないほうがいい」

「分かったわ、あの丘までにする」

一人でチョコボに跨り爽快に走り出し
早く来いと言わんばかりに大きく手を振っている

「バッシュ、来て!」

「何かあったか?」

「ええ、見て!素敵な景色」





髪をなびかせ遠くを見つめる横顔
細めた瞳に微笑をたたえた口元

はどれほどの表情を持ちえているのか

目線に気が付いてこちらを向いて首をかしげる

「見とれているの?」

「―いや、その」

その言葉に動揺してしまったのは景色ではなくを見ていたからだ

「こんなに素敵な場所だものね。きっと朝日や夕方ならもっと壮大だわ」

そう言ってまた前を向いた彼女




「また来ようっと」

「一人で来るつもりか?」

「今のところは」

「その時は俺も同行しよう」

「お忙しいじゃないですか」

「一人で行かれるよりはいい」

「バッシュにそれほど迷惑をかけるようなら来ません」

少し眉を寄せたに自分の言葉の足りなさを気付かされる

「すまない、怒っている訳ではないんだ」

はクスリと笑って問いかける

「バッシュと一緒で問題ないのなら、またこうやって来てくれますか?」

「ああ、もちろんだ」



この景色にも劣る事のない鮮やかな笑顔

ありがとうと口にしたのこの顔が見られるのなら
何度だってこの場所に来よう、そう思ってしまう―